アルコレ戦役 33:ダヴィドウィッチ師団のリヴォリ方面への後退とフリウーリ軍のカルディエーロへの進出
Battle of Arcole 33
カルディエーロの戦い、アルコレの戦い
勢力 | 戦力 | 損害 |
---|
フランス共和国 | カルディエーロの戦い:約13,000人 アルコレの戦い:約19,000人 |
カルディエーロの戦い:死傷者と捕虜の合計約1,800人、大砲2門 アルコレの戦い:死傷者約3,300人、捕虜約1,200人 |
オーストリア | カルディエーロの戦い:12,000人~16,000人 アルコレの戦い:約22,000人 |
カルディエーロの戦い:死傷者と捕虜の合計1,243人 アルコレの戦い:死傷者約2,070人、捕虜約4,144人、大砲11門 |
ダヴィドウィッチ師団の後退の決定
11月19日正午、ピオヴェッツァーノにいるダヴィドウィッチは、18日午前5時頃にアルヴィンチが送った書簡を受け取り、フリウーリ軍がアルコレの戦いで敗北しヴィチェンツァに向かって後退していることを知った。
そして夕方、偵察からの報告で「フランス軍はペスキエーラ要塞の前にいること」「ボナパルトは18日午後にヴェローナに入り、19日朝にヴィラフランカに向かったこと」を知った。
ダヴィドウィッチはこの時点で師団右翼をヴィラフランカに向かわせ、左翼でブッソレンゴを経由してヴェローナに向かう決定を下していた。
しかし、フリウーリ軍の退却によりレッシーニ山脈がガラ空きとなり、左側面を衝かれ後方を遮断される可能性が高まった。
レッシーニ山脈にはセウレン中佐の部隊しかおらず、キウーサ砦の前にルシニャン大佐率いる2個大隊がいるのみだった。
◎ダヴィドウィッチ視点での両軍のおおよその位置関係
19日午後、ダヴィドウィッチはヴァレッジョとヴィラフランカを経由してダヴィドウィッチ師団と対峙しようと前進しているフランス軍を自分の目で見てフランス軍がチロル軍に主力を振り向けたことを確信した。
そして夜、招集できるすべての将軍をピオヴェッツァーノに集めて会議を開いた。
会議では、夜中にフリウーリ軍から事態が好転した内容の連絡が届かなかった場合、「退路を確保するためにアディジェ川左岸にいくつかの大隊を派遣すること」、「派遣したいくつかの大隊をカバーするためにチロル軍をリヴォリに行く途中にある道幅が狭まり防衛しやすい位置に移動すること」が全会一致で決定された。
夜10時、アルヴィンチが18日午前5時にモンテベッロから送った書簡がダヴィドウィッチ師団本部に届いた。
フリウーリ軍の状況は好転せず、チロル軍とフリウーリ軍の間には致命的な空間が開いていることを決定付けた。
それはフランス軍がヴェローナからチロル軍とフリウーリ軍の間にあるレッシーニ山脈に侵入してチロル軍の退路を遮断する危険性が増大したことを示していた。
11月19日夜、オージュロー師団の約1,500人を超える強力な前衛がスタッラヴェナ(Stallavena)でオーストリア軍の前哨部隊を押し戻し、1つはルーゴ方面、もう1つはネグラール(Negrar)方面に合計約5,000人の列が続いた。
リヴォリ方面への後退と左翼の強化
11月20日の早朝、ダヴィドウィッチは偵察のための騎兵隊をカステルヌォーヴォとカヴァルカゼッレ(Cavalcaselle)経由で送った。
騎兵隊は、ヴェローナからパラッツォーロ(Palazzolo)向かっている部隊とヴィラフランカからカステルヌオーヴォに向かって前進している部隊を発見した。
オーストリア軍の前哨部隊はすぐにいたるところで押し返された。
その間、残りの部隊はすでにリヴォリ方面への後退を開始していた。
右翼はカヴァイオーンを背にし、中央と左翼は戦列を形成してカヴァイオーン東の丘陵地帯からアディジェ川まで続き、ヴォラルニェ(Volargne)の対岸に配置された。
◎ダヴィドウィッチ師団のリヴォリ方面への後退
バイエル(Bayer)中佐は1個大隊でキウーサ砦のルシニャン旅団を強化するよう命じられ、セウレン中佐はルーゴからポデスタリア(Podestaria)に移動するよう命令を受けた。
この時すでにダヴィドウィッチ師団のアラへのアディジェ渓谷を通る退却ルートはすでに脅かされつつあった。
フランス軍の列はヴェローナからヴィラフランカの間にあり、さらにはアディジェ川を越えてヴァル・パンテナにまで移動を続けていた。
レッシーニ山脈方面の状況は不明なものの危機感を持ったダヴィドウィッチはさらにルシニャン旅団を強化するために、1個大隊をリヴォリの前の位置からアディジェ川を越えさせて派遣した。
フリウーリ軍のヴィッラノーヴァへの進出
11月20日午前10時、フリウーリ軍はオルモを出発しモンテベッロに向かって前進を開始した。
そしてミロラドウィッチ少佐に分遣隊とともにサン・ボニファーチョに行き、午後5時にミトロフスキー将軍と同時にサン・ボニファーチョを攻撃するよう命令書を送った。
しかし、この命令書の到着が遅れたたため、ミロラドウィッチ少佐はロニーゴを経由してサン・ボニファーチョに向かったが、夜9時にしか到着できなかった。
そのため、この攻撃計画は翌朝に延期された。
アルヴィンチからミロラドウィッチへの命令書はこの時点で最低2度遅れて届けられている。
そのためオルモからロニーゴへの道の状態はかなり悪かったのではないかと推察される。
ホーエンツォレルン将軍は午後2時に前衛部隊とともにモンテベッロに到着し、ヴィッラノーヴァにいるフランス軍の前哨部隊を攻撃して追い払った。
そこで馬9頭と騎兵8人を捕らえた。
前衛部隊はヴィッラノーヴァに前進し、前哨部隊をカルディエーロにいるフランス軍と対峙するよう配置した。
フリウーリ軍本体はヴィッラノーヴァの後ろに向かい、アルヴィンチは夜7時に本部とともに到着した。
◎フリウーリ軍のヴィッラノーヴァへの進出
この時、16,000人強を有するアルヴィンチはできるだけヴェローナに近づきたいと考えていた。
そのためヴィッラノーヴァに到着するとすぐにダヴィドウィッチに書簡を送った。
「21日夜までに、22日には全力を尽くして敵に立ち向かうという確約をあなたから受け取ったならば、我々は弱点(恐らくチロル軍とフリウーリ軍の共同作戦ができないこと)を乗り越えることができ、22日の早い段階でヴェローナの下でアディジェ川を渡るでしょう。そして、急いであなたが考えていることやあなたの情報を私に伝えてください。遅くともこの書簡を届けた者が22日正午にはここに戻って来ることを望んでいます。その場合、23日朝にあなたたちがすべての犠牲を払って敵を攻撃して打ち倒すという事実を確約できるなら、私は23日朝にアディジェ川を再び渡ります。フリウーリ軍の行動はすべてあなた次第です。」
しかし、この書簡は21日夜11時半にアラ(Ala)まで撤退しているダヴィドウィッチに届けられることとなる。
フリウーリ軍のカルディエーロとアルバレードへの進出
11月21日、フリウーリ軍の縦隊がカルディエーロとアルコレに向かって前進を開始した。
前衛部隊を率いるホーエンツォレルン将軍は、ルクレール将軍率いるカルディエーロに配置されたフランス軍の後衛を攻撃し、カルディエーロから追い出すことを決定した。
その間、ルクレール自身が前進してホーエンツォレルン旅団の前哨部隊を押し戻しその場所を占領していた。
ホーエンツォレルン将軍は前衛を3列に分割した。
第1列目の右翼をガヴァッシーニ大佐が指揮し、フランス軍の左側面と後部を攻撃するためにコロニョーラへ向かった。
第2列目の左翼をジーゲンフェルド(Siegenfeld)少佐が指揮し、カルディエーロへの迂回機動を行った。
第3列目の中央をホーエンツォレルン将軍自身が指揮し、カルディエーロに向かって前進した。
ルクレールは強く抵抗したが後退を余儀なくされた。
ジーゲンフェルド少佐はカルディエーロの高地(恐らくモンテ・ロッカ及びモンテ・マティア)を銃剣で攻撃し、数人の士官と100人以上のフランス兵を捕らえた。
◎カルディエーロでの戦闘
午後4時、アルヴィンチはカルディエーロからダヴィドウィッチ宛に書簡を送り、「敵をカルディエーロ近くの高地から追い払い、フリウーリ軍がそこに駐留していること」を伝え、再び「先にあなた(ダヴィドウィッチ)に送った伝令が22日正午までに歓迎の報を持って戻ってきたとき、23日朝にアディジェ川を渡ること」を保証した。
フランス軍は夜7時にサン・マルティーノを引き上げヴェローナに向かった。
ホーエンツォレルンはそれを騎兵隊で追跡させ、前哨部隊をヴェローナの目と鼻の先にあるサン・ミケーレに配置した。
そしてヴェローナへの追跡で約60騎のフランス騎兵隊を捕らえることができた。
オーストリア軍の前衛はこの戦いで5人の死者、21人の負傷者を出し、48人が捕らえられたと言われている。
アルヴィンチはその後、プロベラ師団とともにコロニョーラに本部を置いた。
一方、アルコレ方面に向かっていたミトロフスキー将軍の前にはフランス軍の姿は見えず、前衛をアルバレード、本体をアルコレに駐留させた。
そしてサン・ボニファーチョに予備として2個大隊を配置した。
ミトロフスキーは夜の間にアルコレの戦い時にフランス軍がアルポーネ川に架けた橋を破壊させた。
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