アルコレ戦役 13:ダヴィドウィッチ師団側の侵攻計画の全容
Battle of Arcole 13
カルディエーロの戦い、アルコレの戦い
勢力 | 戦力 | 損害 |
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フランス共和国 | カルディエーロの戦い:約13,000人 アルコレの戦い:約19,000人 |
カルディエーロの戦い:死傷者と捕虜の合計約1,800人、大砲2門 アルコレの戦い:死傷者約3,300人、捕虜約1,200人 |
オーストリア | カルディエーロの戦い:12,000人~16,000人 アルコレの戦い:約22,000人 |
カルディエーロの戦い:死傷者と捕虜の合計1,243人 アルコレの戦い:死傷者約2,070人、捕虜約4,144人、大砲11門 |
ダヴィドウィッチによる侵攻計画の修正
11月2日の夜、遅延された侵攻計画を一部修正し各旅団に命令を発した。
◎チロル軍の侵攻計画(修正後)
デンノ周辺におり第1列を率いるラウドン将軍は、11月3日正午に第1列を持ってモリーネ(Moline)周辺に到着する。
そして翌11月4日に、モリーネから1列目はサンタ・マッセンツァ(Santa Massenza)とヴェッツァーノ(Vezzano)に向かって前進し、2列目はタヴォド(Tavodo)に向かって前進し、歩兵の分遣隊を派遣してサルケ(Sarche)を占領する。
モルヴェーノ(Molveno)周辺の3列目は、峠を越えて、テルラーゴ(Terlago)とカディネ(Cadine)の小道が合流するコヴェロ(Covelo)を行進する。
一部の歩兵に支えられた騎兵隊の分遣隊は、サルカ(Sarca)川を越えて、ゴデンツォ(Godenzo)、バッリーノ(Ballino)、プランツォ(Pranzo)を経由してナーゴ(Nago)に向かって前進し、トルボレのフランス軍を攻撃する。
その後モーリ(Mori)に向かい、可能ならアディジェ川に架かる橋を奪取する。
トルボレへの攻撃を支援するために、2列目のサルケの歩兵分遣隊はドロ(Dro)、1列目のサンタ・マッセンツァの部隊はカヴェーディネ(Cavedine)に進軍する。
残りの部隊は状況に応じて対応する。
第2列を率いるオクスカイ将軍は11月3日にサン・ミケーレを越えてコロナ山に向かいフランス軍がラヴィースの前を強化するよう誘導する。
攻撃が夜間にまで及ぶ場合、大砲による砲撃を行い、非常に強い部隊がいるとフランス軍に思わせる。
そして11月4日の動きはその後の状況によって決定する。
第4列と第5列を率いるビカソヴィッチ将軍は11月3日にフランス軍から見えないようにソヴェール(Sover)周辺に集結する。
翌11月4日の夜明け頃までに第5列でベドッロを経由しカネッツァに続く渓谷にあるサンタ・マッダーレナ(恐らくパルー付近の教会)へ向かい、その後第5列の指揮をセウレン中佐に委譲する。
第4列は第5列の後に続き、ベドッロを占領し、11月4日の夜明け頃、ピアッツェへの攻撃を開始する。
その後、フォルナーチェ(Fornace)、チヴェッツァーノ(Civezzano)へ向かう。
第3列を率いるスポーク将軍は11月2日の真夜中に最大の沈黙の中で出発し、3日正午頃にチェンブラに集結し、その後セゴンツァーノに向かう。
翌11月4日夜明け頃、セヴィニャーノへの攻撃を開始し、セヴィニャーノ、ロナ(Lona)、ラゼス(Lases)の町を通ってアルビアーノ(Albiano)の北の丘に進む。
そしてリジニャーゴとの間に橋を架ける。
第3列、4列、5列は11月4日午前6時に開始される予定である攻撃の前にセゴンツァーノ、ベドッロ、マッダーレナに到着している必要があった。
第5列と第6列を率いるセウレン中佐は部下の1人に第6列の指揮を一任し、自身は第5列を指揮する。
第6列はテルヴェからボルゴ・ヴァルスガーナに進みレーヴィコ・テルメまで行進を続け、レーヴィコ・テルメの前でペルジーネを攻略するための適切な位置を選択する。
そしてカネッツァ(Canezza)方面から南下してくる第5列と合流してペルジーネ攻略し、その後、部隊を2つに分割する。
1つはカルドナッツォ(Caldonazzo)とヴィゴーロ(Vigolo)を経由しマッタレッロ(Mattarello)に向かいアディジェ川に強力な哨戒部隊を派遣する、もう1つはカルドナッツォからカルボナーレ(Carbonare)、サン・セバスティアーノ(San Sebastiano)、フォルガリーア(Folgaria)を経由しカッリアーノへ向かう。
ダヴィドウィッチの侵攻計画の全容
この侵攻計画の全容は第1列のラウドン旅団がヴォーボワ師団左翼側から、第2列のオクスカイ旅団、第3列のスポーク旅団、第4列のビカソヴィッチ旅団でヴォーボワ師団右翼側から両翼包囲してトレントを占領し、第5列、第6列のセウレン旅団で後退するヴォーボワ師団の右側面もしくは後方を衝きカッリアーノを占領し、第1列のラウドン旅団がヴォーボワ師団左翼側から進軍してロヴェレトの後方に出て、第5列、第6列のセウレン旅団でヴォーボワ師団の右側面もしくは後方を衝きロヴェレトを占領するという大掛かりな計画だった。
ダヴィドウィッチはこの侵攻計画を作成したときフランス軍の行動をいくつか想定しており、フランス軍の動向によってその後の対応を変化させようとしていた。
1つ目はフランス軍がトレントやカッリアーノを防衛しようとした場合。
2つ目はフランス軍が早期に後退しようとした場合。
3つ目はフランス軍が反撃に転じた場合である。
1つ目と2つ目の場合、カリシオ山(Monte Calisio)の側にできるだけ早く砲兵を配置してトレントへ砲撃を行いヴォーボワの後退を促しつつ、第1列のラウドン旅団でトレントの左側面を衝き、第3列のスポーク旅団、第4列のビカソヴィッチ旅団でトレントの右側面を衝き、第5列と第6列のセウレン旅団でマッタレロとカッリアーノを占領しフランス軍の後方を遮断して完全に包囲する。
◎ヴォーボワがトレントを防衛した場合
もしカッリアーノまでヴォーボワ師団が早期に後退した場合、第2列のオクスカイ旅団に支援のために3ポンド砲を持たせてアディジェ川右岸に位置するアルデーノ(Aldeno)に向かわせ、第5列と第6列でカッリアーノをヴォーボワ師団の右側面から片翼包囲して占領し、第1列のラウドン旅団でトルボレのヴォーボワ師団左翼を撃破し、モーリを占領してアディジェ川を渡ることにより後方を遮断して南東側への後退を促す。
◎ヴォーボワがカッリアーノを防衛した場合
さらにヴォーボワ師団がロヴェレトまで早期に逃れ、モーリの橋を渡れなかった場合、フランス軍はどちらにしても包囲の危機に直面しているはずであり、ヴォーボワが南東方向へ後退する選択をした場合はヴォーボワ師団を追跡しつつバルド山とリヴォリを勢力下に置き、アディジェ川沿いを南下してヴェローナへ向かう。
◎ヴォーボワが南東方向に逃れた場合
南方向(リヴォリ方面)へ後退する選択をした場合はヴォーボワ師団を追跡し、バルド山とリヴォリを勢力下に置き、アディジェ川沿いを南下しヴェローナへ向かう。
◎ヴォーボワがリヴォリ方面に逃れた場合
そして3つ目の場合、ヴォーボワが反撃に転じる可能性のある地点は2ヵ所あり、それはトレントとカッリアーノであると考えられる。
どちらの地点でもヴォーボワは正面で防衛し、右翼側から攻勢をかけ、ダヴィドウィッチ師団左翼を突破して背後もしくは側面を衝き撤退に追い込むのである。
◎ヴォーボワがトレントで反撃に転じた場合
トレントで反撃に転じるヴォーボワのリスクは、トレントという守りづらい地形のため左翼側に多くの兵力を割かなければならないことと撃破しなければならないスポーク旅団とビカソヴィッチ旅団に相対する戦力が少ないことである。
そのためトレントで反撃に転じる場合、惨敗した上に完全包囲されることも視野に入れて実行しなければならないだろうと考えられる。
◎ヴォーボワがカッリアーノで反撃に転じた場合
ヴォーボワが反撃に転じる地点で、最も成功率が高いと考えられるのがカッリアーノである。
カッリアーノはカヴァッロ川が流れ2つの城がそびえ立つ狭隘な地形で防衛しやすい場所であり、山岳部を通ってダヴィドウィッチの後方を衝ける道があり、ダヴィドウィッチはトレント周辺の警備とフリウーリ軍との連絡線の確立のために部隊を派遣しなければならないからである。
ダヴィドウィッチはその対策として再編成において師団左翼側により多くの兵力を割いた。
フリウーリ軍との統合計画
ダヴィドウィッチとしてはできるだけ早期にフリウーリ軍との統合を行いたいと考えており、その進捗により4通りの方法が考えられた。
◎進捗による連絡線の変更
1つ目はトレントまで進んだ時で、ヴァルスガーナを通りフリウーリ軍との中間に位置するミトロフスキー旅団を経由する方法。
2つ目はカッリアーノまで進んだ時で、左翼を必要に応じて強化しつつ南東方向の山岳地帯にある幾つかのルートの内の適切なルートを通り連絡線を繋ぐ方法。
3つ目は、ロヴェレトまで進んだ時で、ヴァッラルサを通りフリウーリ軍と連絡線を繋ぎ、レッシーニ山脈を通るかもしくはアラ、ドルチェを経由しアディジェ川左岸沿いを南下してヴェローナに向かって進軍する方法。
4つ目は、もしフランス軍がロヴェレトから南東方向に逃れバルド山の占領を怠った場合、トレント近くでアディジェ川を横断し、フランス軍をマドンナ・デッラ・コロナから追い出し、アディジェ川右岸に沿って進軍し、リヴォリとブッソレンゴを経由してできるだけ速くヴェローナに移動する方法である。
4つ目の方法は連絡線を繋ぐというより、チロル軍とフリウーリ軍の間にヴォーボワ師団がいるため後方のヴァルスガーナを経由する連絡線を活用しつつヴェローナに進軍する方法である。
ダヴィドウィッチはチロル軍とフリウーリ軍の早期の統合がアルコレ戦役における勝利を決定するものだということを認識していたのである。
そして、もしダヴィドウィッチ師団の計画が順調に進み、フリウーリ軍の進捗が遅れてた場合はこれらの機動によりフリウーリ軍と対峙しているフランス軍の側面を脅かしフリウーリ軍の支援を行うのである。
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