ロアノの戦い 02:侵攻作戦の開始 Battle of Loano 02

ロアノの戦い

勢力 戦力 損害
フランス共和国 約25,000人 約1,700人
オーストリア
サルディーニャ王国
約18,000人 約4,000人
捕虜:約4,600人
 

ナポレオンの作戦Napoleon's Strategy

 当時の参謀本部である陸地測量部に配属されていたナポレオンは陸軍大臣カルノーに、ヴァド(Vado)、チェバ(Ceva)を攻略する作戦を提示した。

 ヴァドはサヴォナに隣接している港街であり、チェバはガレッシオの遠く北に位置していた。

 サオルジォの戦い時、フランス・ジェノヴァ間の交易航路を妨害しているオネリアの私掠船団やイギリス海軍に悩まされていたが、この時点でも未だフランス・ジェノヴァ間の交易航路は妨害を受けていた。

 ロアノからジェノヴァまでの港はピエモンテ及びオーストリアによって占有されていた。

 その中でも特に大きな港がヴァドであった。

 ヴァドが攻略できれば、ジェノヴァまでは目と鼻の先となり、イギリス海軍や海賊にとって海上での妨害は困難となる。

 これにより、補給がかなり改善できるのである。

 さらにピエモンテ軍とオーストリア軍の接点である重要地点チェバを攻略することにより、ピエモンテ・オーストリア間の連絡線を長くし連携を妨害できる。

 ピエモンテとオーストリアの緊密な連携をした作戦を難しくするには不可欠な地点であった。

第一段階・・・コルサリア方面への陽動攻撃

第二段階・・・ガレッシオ、ロッカ・バルベナ、ロアノへの同時攻撃

第三段階・・・フランス軍左翼はチェバへ進軍。中央はロッカ・バルベナからバルディネート、カリッザーノを通り、ロアノ周辺にいるピエモンテ・オーストリア軍の後方を遮断。右翼はロアノで対峙しつつ、ロアノの大砲の射程外を迂回しトイラーノ、ボイッサーノを攻略しロアノを包囲。

第四段階・・・ヴァド、チェバを占領。


 この作戦はナポレオンが7月に考案したものであり、実際の戦闘は準備が遅れ雪の降る11月だった。尚且つ、作戦に必要な兵数を下回っていたため、規模を縮小して作戦を実行することになった。

フランス軍の作戦 French military operations

 シェレールにより作戦決行の命令が出された。

◎フランス軍左翼(セリュリエ師団)

 フランス軍左翼はセリュリエ中将が指揮し、5,155人を有していた。

 ガレッシオ周辺で防衛線を構築しているコッリ中将と対峙し釘付けにすることがセリュリエ師団の目的だった。

 タナロ川の左岸はモリス旅団、タナロ川の右岸はセリュリエ自身が担当した。

 セリュリエはサン・ベルナルドを正面から攻撃し占領し、モンテ・スピナルダのオーストリア軍を追い払い、モンテ・ソッタを占領する。その後、カリッザーノ攻略の準備をする。

 モンテ・スピナルダとモンテ・ソッタを占領することにより、ピエモンテ・オーストリア軍の右翼と中央・左翼を分断し、セリュリエがフランス軍中央を支援しやすくする。


◎フランス軍中央(マッセナ師団)

 フランス軍中央はマッセナ中将が指揮し、13,276人を有していた。

 師団左翼はラハープ中将(5,255人)がブリック・カーロ(Bric Curlo)からモンテ・リンゴ(Monte Lingo)を攻略する。

 師団中央はマッセナ中将がビザネット旅団(3,687人)とともにスクラベイオンを攻略する。

 師団右翼はシャーレット中将(4,334人)がモンテ・グアルディオラ(Monte Guardiola)からロッカ・バルベナを攻略する。

 その後、ピエモンテ・オーストリア軍を圧迫しながらロアノを大きく迂回するように機動し、ロアノ後方を遮断する。

 ピエモンテ・オーストリア軍の中央と左翼を分断するように機動する。


◎フランス軍右翼(オージュロー師団)

 フランス軍右翼はオージュロー中将が指揮し、6,961人を有していた。

 ヴィクトール旅団はロアノ正面、ルスカ旅団はボイッサーノへ進軍し大カステッラーロを攻略、バネル旅団はトイラーノの拠点シャルトリューズを攻略する。

 その後、ロアノを占領しピエモンテ・オーストリア軍を追撃。ヴァドへ向かう。


 ナポレオンの作戦と比べてフランス軍左翼の作戦規模が大きく縮小しており、陽動と中央の支援が役割となった。

 中央、右翼はおおよそ予定通りであった。

 この作戦の目標は侵略により現地調達を行って来春以降も戦闘継続が可能となるようにし、ヴァドを占領することによりジェノヴァとの交易航路の安全を確保して補給状況を改善させることであった。

 フランスのイタリア方面軍はこの冬、現地調達をしなければ存続が危ぶまれるほど追い込まれていた。