【詳細解説】ジェノヴァ共和国の滅亡【第一次イタリア遠征】


本記事ではレオーベン条約の締結からカンポフォルミオ条約の間の出来事であるナポレオンによる「ジェノヴァ共和国の滅亡」について時系列に沿って経過をまとめまています。

リグーリア海岸を支配するジェノヴァ共和国はフランス軍がオーストリア帝国国境まで到達するための通過点であり、兵站上重要な地点でした。

フランス共和国とオーストリア帝国という大国に挟まれながらも中立を貫いた「最も穏やかなジェノヴァ共和国」の最後はどのようなものだったのでしょうか?

フランス軍側だけではなく、ジェノヴァ共和国側の動向も調査し、出来得る限り網羅的にまとめましたのでジェノヴァ共和国の滅亡の流れについて詳しく知りたい人や戦略好き、ナポレオン好きな人は是非ご覧ください。

ジェノヴァ共和国の滅亡 01 ナポレオンによる北イタリアの支配

5月19日時点でボナパルトはフランス領となった、もしくはこれからフランス領とするであろう北イタリアの領土を3つの姉妹共和国によって支配する構想をすでに考えていました。

1つ目はボローニャ、フェラーラ、ロマーニャ、ヴェネツィア、ロヴィーゴ、トレヴィーゾの一部、および群島の島々から成り、人口160万~180万人の住民を擁するチスパダーナ共和国。

2つ目はロンバルディア州、ベルガモ、クレマ、モデナ、マッサ=カッラーラ、ガルファニャーナ、スペッツィア湾から成り、人口180万〜190万人の住民を擁するチザルピーナ共和国。

3つ目は旧オーストリア帝国領、ジェノヴァおよびスペッツィア湾を除くジェノヴァ州からなるリグーリア共和国です。

これらの姉妹共和国はナポレオンが首長となり、ナポレオン王国のようなものを形成していました。

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ジェノヴァ共和国の滅亡 02 ジェノヴァ共和国の滅亡とリグーリア共和国の誕生

1797年5月21日、ジェノヴァ共和国でフランス人による暴動が発生しました。

暴動はさらに勢いを増し、ジェノヴァ軍が出動して殺し合いにまで発展しました。

駐ジェノヴァ大使であるファイポールはこの時を待っていました。

5月23日、ファイポールはナポレオンに「ジェノヴァ政府が最初の一歩を踏み出した。」との書簡をすぐに送りました。

5月25日、ファイポールからの第一報が届くと、ナポレオンはジェノヴァ政府を脅迫する書簡を送り、セリュリエ師団を動かす準備を行いました。

24時間以内のフランス人の解放とフランスに対して扇動したジェノヴァの民衆達の逮捕を要求し、もし要求が受け入れられない場合、ジェノヴァ政府を打倒することを暗に示唆し、イタリアに10万の兵がいると脅迫したのでした。

5月28日、出動命令を受けたランヌ将軍はすぐにパヴィアへ向かい、ルスカ将軍率いる先遣隊をジェノヴァ方面へ向かわせました。

ファイポールはランヌ旅団の圧力を利用してジェノヴァ政府と交渉し、ナポレオンの要求通り、逮捕されたフランス人の解放、フランス人と対立した集団の武装解除、フランス人を弾圧した議員や首謀者の逮捕、賠償金の支払いを行わせることに成功しました。

ナポレオンの恐怖に屈したジェノヴァ政府は、国民に対して「国の健全はフランスによってもたらされるものであるため、フランス人と融和するように」と布告を出しました。

ナポレオンはさらにジェノヴァ政府を廃止し、新たに臨時政府を樹立することを要求し、大評議会の決議を経てジェノヴァ政府は廃止されました。

そして6月6日、ジェノヴァ共和国はフランス軍の圧力に屈し、ボナパルトの本部のあるモンテベッロでフランス共和国との秘密条約(モンテベッロの和約)を締結することを余儀なくされ、新たなリグーリア共和国臨時政府は6月14日に設置されることが決められました。

1005年の建国から792年後の1797年6月14日、ジェノヴァ共和国はナポレオンによって滅ぼされ、新たにリグーリア共和国が建国されることになります。

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参考文献References

・Jacques Marquet de Norvins著 「Geschichte des Kaisers Napoleon, 第1巻」(1841)
・Wilhelm Rüstow著「Die ersten Feldzüge Napoleon Bonaparte's in Italien und Deutschland 1796 und 1797」(1867)
・Correspondance de Napoléon Ier: publiée par ordre de l'empereur Napoléon III,第3巻
・Heinrich von Sybel著「Geschichte der Revolutionszeit von 1789 bis 1795, 第4巻」(1870)
・その他