なぜ日本は平和なのか<日本の平和はどのように作られているのか>

2022年10月17日執筆

平和の種類と本記事における平和

平和学において平和は「消極的平和」と「積極的平和」に分けられます。

この区分はノルウェーの社会学者ヨハン・ヴィンセント・ガルトゥング(Johan Vincent Galtung)によって提起されたものです。

「消極的平和」とは戦争や内乱・紛争などの直接的な暴力が無い状態のことを指し、「積極的平和」とは消極的平和に加え、貧困・抑圧・差別など社会構造に起因する間接的な暴力(構造的暴力)もない状態のことを指します。

あなたが想像する「平和」は「消極的平和」なのではないでしょうか?

本記事における平和も「消極的平和」を指します。

平和であることの利益

国が「消極的平和」の状態だと「消極的平和」ではない状況の場合と比較して主に5つの利益があります。

1、生命を脅かされることがない

戦争や内乱状態の場合、突然の銃撃やミサイルによる破壊などで死亡や怪我をするかもしれません。

ですが平和な状態の場合、これらが理由であなたの親、祖父母、子供、兄弟姉妹などの家族や親戚、恋人、友人など、あなたの大切な人が突然殺害されたり怪我をしたりすることはありません。

その結果、これが原因で病院が混雑し医師や看護師、医療品不足になることもありません。

2、経済が安定する

銃撃やミサイルなどを心配することなく安心して商売を営むことができます。

戦争などにより道路やエネルギー、ITインフラなどが破壊され、道路が寸断されたり、電気やガス、水道が止まったり、インターネットが使えなくなったりすることもありません。

海外との取引に関して条約を結びやすくなり、貿易も安定します。

その結果、物価は安くなって安定し、同時に経済も安定します。

3、税負担が少ない

戦争がないため国防費は低く抑えられ、その分税負担が少なくなります。

戦争や内乱などがある状態の場合、戦争などのために特別税などが課税されたり徴発される可能性がありますが、「消極的平和」の状態の場合、それもありません。

4、財産を失うことがない

敵国の兵士や武装勢力などによってあなたの町が占領され、家や食料、生活用具、金銭などを奪われることはありません。

あなたの家も破壊されることなく安心して住むことができますし、財産を奪われることもないため先の計画も安心して立てることができます。

もし家を破壊されたりあなたの安全が脅かされた場合、避難勧告や避難命令が出され、頑強な建物や地下などに避難しなければならないでしょう。

もしかしたら、あなたは安全な地を求めて国外脱出もしくは難民となり、海外での生活を余儀なくされるかもしれません。

その際にあなたの大切な人たちとの別れがあるかもしれません。

5、召集がない

日本は募兵制の国です。

そのため徴兵はありません。

ですが、日本が戦争状態に突入してより多くの兵士が必要となった場合、法改正が行われ召集令状(第二次大戦下での通称は赤紙)が届き、あなたやあなたの大切な人が戦地に送られるでしょう。

徴兵制の国であったとしてもロシア・ウクライナ戦争における両国のように総動員や予備役兵の召集が行われ戦地に送られるでしょう。

そして召集によって家族と離れ離れになり、家族はあなたの心配を、あなたは家族の心配をすることになるでしょう。

日本の地政

日本の主な周辺国は、中国、北朝鮮、ロシア、韓国、アメリカ、そして台湾(現在独立していないため国とは認められていません)です。

日本は地政的にアメリカ、中国、ロシアという大国に囲まれ、北朝鮮も含めると4ヵ国もの核保有国に囲まれています。

日本は朝鮮戦争の休戦以降、サンフランシスコ平和条約によって独立し、自衛隊の前身である警察予備隊が創設され、ほぼ同時期に日米安全保障条約が結ばれました。

アメリカが日本を独立させた理由は、中国やロシア、北朝鮮と対抗するための緩衝地帯を作るためです。

そのため日本は歴史的に、そして現在もアメリカにとっての対旧共産圏における緩衝地帯です。

もう70年ほど前の対立関係ですが、その対立は現在も姿を変えて継続しています。

中国、ロシア、北朝鮮は独裁国家であり、アメリカ、日本、台湾、韓国の民主主義国家とは軍事的にも対立関係となっています。

日本の防衛白書と自由民主党におけるロシア、中国、北朝鮮の評価と位置づけ

日本の防衛白書は、中国の急速な軍事力強化を指摘し、中国は「わが国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっている」と記しています。

ロシアについては、中国との軍事協力が進んでいることを指摘し、北方領土を含む極東地域のロシア軍の位置づけや動向について「懸念を持って注視していく必要がある」と記しています。

北朝鮮については、「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」と記しています。

日本の保守政党である自由民主党においては、中国は「重大な脅威」、ロシアは「現実的な脅威」、北朝鮮は「より重大かつ差し迫った脅威」と評価されています。

これらの評価は2022年現在のものであり、10年前と比較して脅威の度合いは各段に増しています。

周辺国の戦略と動向

中国の太平洋及びインド洋における海洋戦略と日本海での動き

◎第一列島線、第二列島線、第三列島線の概要図

第一列島線、第二列島線、第三列島線の概要図

中国がおよそ30年以上前に打ち立てた海軍の計画は4つの段階に分かれており、現在はその3段階目にあると考えられます。

第一段階:1982~2000年 中国沿岸海域の完全な防備態勢を整備。

第二段階:2000~2010年 第一列島線内側の制海権確保。

第三段階:2010~2020年 航空母艦の建造、第二列島線内側の制海権確保。

第四段階:2020~2040年 アメリカ海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止しアメリカ海軍と対等な海軍を作り上げる。

これらの計画は日本の領海は無いものとして計画されており、対アメリカに主軸が置かれています。

この海洋戦略を打ち立てたため日本において中国脅威論がより強く主張され始めました。

日本政府もアメリカ政府も当初これらの海洋戦略を無理があるだろうと考えていましたが、2022年時点で第二段階の第一列島線内側では中国海軍が我が物顔で航行し、2012年9月25日には「遼寧」が、2019年12月17日には「山東」が就役し、中国はさらに第3、第4の航空母艦を建造しようとしており航空母艦の建造はすでに達成されています。そして第二列島線へと進出しようとしています。

2022年4月にはオーストラリアの北東に位置するソロモン諸島が中国と安全保障に関する協定を締結しました。

恐らく日本の沖縄、台湾、フィリピンなどを飛び越えてソロモン諸島やその周辺の島々と安全保障に関する協定を結ぶことによって海軍などを駐留させ、第三列島線への進出と有事の際にオーストラリアとの航路の遮断を企図していると考えられます。

そしてインド洋に第四列島線、第五列島線を設定したと言われています。

中国は今後もこの海洋戦略に従って、もしくは発展させて計画を進めていくでしょう。

日本海においては、2012年8月、中国企業と北朝鮮との共同開発により羅津港の第1埠頭から第3埠頭までを開発して50年間租借し、新たに3基の埠頭を建設するという羅津港の事実上の接収を北朝鮮と合意しました。

※羅津港は2010年にロシアに使用権を付与したと言われています。

その翌月には中国企業が清津港を30年間租借することで北朝鮮と合意しました

同時期である2012年8月には韓国の李明博大統領が、不法占拠をしている竹島に上陸しています。

当時の韓国は反日政策をアピールすれば支持率が上昇する傾向が強いことが以前から知られており、李明博大統領の求心力の低下や不祥事などによる支持率の低下を挽回しようとしたものだと見られていますが、羅津港と清津港を中国が租借することの隠れ蓑として中国にそそのかされた可能性も否定できません。

現段階では主に貿易に利用されているだけですが、中国が自由に利用できる港が日本海にも存在することは注視していた方がいいでしょう。


※中国人民解放軍の脅威度や米中両陣営の戦力を知りたい方は下記リンク記事をチェックしてください。

台湾有事イメージ  【中国人民解放軍の脅威度】台湾有事における米中両陣営の戦力比較
https://senjyutushi.net/topics/China-threat-level.html

ロシアの国家戦略

ロシアの国家戦略(National strategy)には大きく分けて3つの方針があります。

1、旧ソ連諸国における勢力圏の維持。

2、旧共産圏や北極圏などの新たな領域における影響力や勢力圏の維持。

3、多極的世界の構築(米国の一極支配への対抗)です。

中でも1が最重要視されており、ウクライナ侵攻を行ったのも国家戦略に従っているという側面があります。

対日戦略は 2 と 3 が該当すると考えられますが、ロシアの対日戦略は中国(中国の対日戦略は対アメリカ戦略に内包されている)と比較して穏便であり、現在のところ日本の領土や領海を大きく脅かすような表立った計画は無く、旧ソ連の領土や不法占拠している地域をロシア連邦に組み込んでいくことを主軸に置いている印象を受けます。

しかし、ロシアは旧ソ連時代に終戦間際の弱った日本との中立不可侵を侵し、仲裁を頼んでいたにも関わらず日本に侵攻してきたという経緯があり、自国の拡大のためには手段を選ばないという怖さがあります。

その時に不法占拠した北方四島(択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島)も未だ日本に返還していません。

そのため、例え表面上危険な計画は無かったとしても、ロシア極東方面軍の軍事力の水準に合わせて日本も防衛力を強化していくことが重要でしょう。

北朝鮮の状況と基本戦略

北朝鮮の戦略は特に公開されているものが無く真実はベールに包まれています。

北朝鮮は保有している兵器が旧式過ぎてまともに戦える地上軍、航空戦力、海軍を保有していないと見られています。

そのため北朝鮮は軍事力を核開発と長距離ミサイルの開発に注ぎ込み、その存在感と影響力を示そうとしています。

2019年時点の北朝鮮のGDPは335億400万ドル(名目か実質なのかは不明)、休戦状態にある韓国のGDPは1兆6514億2000万ドル(名目)であり、その差は49倍となっています。(日本の名目GDPは5兆1203億1000万ドル)

そのため北朝鮮の戦力はこの状態が続くと思われていましたが、2022年のロシア・ウクライナ戦争においてロシアから武器購入を打診されており、北朝鮮がこれによって資金を手に入れた場合、北朝鮮軍の武器が最新のものに置き換えられると考えられます。

北朝鮮は経済制裁中ですが、中国やロシアが支援しているため中国・ロシアに協力的です。

これらのことを踏まえて考えると、北朝鮮の現在の基本戦略は「生存(金総書記にとっては金独裁体制の維持・継続)」ですが、力を付けた場合はより強気になると考えられますし、北朝鮮が主体となって日本などに宣戦布告してくる可能性は非常に少ないでしょうが、有事の際は中国やロシアに直接的ないし間接的に協力するものと考えられます。

なぜ日本は「消極的平和」の状態を保てているのか

2022年現在の日本は「消極的平和」な状態を第二次大戦終結以降、ずっと維持し続けています。

日本が平和な理由には大きく分けて3つの側面があります。

日本国憲法第九条の存在

◎日本国憲法第九条条文

第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

日本国民の間では「平和憲法」として認識されている条文です。

様々な議論や解釈があり、人間同士の共感を土台とした平和を唱える人達や日本の防衛力を落とそうとしたい人達、「消極的平和」を唱えることによって何らかの利益を守りたい人達や自らの思想を実現したい人達などの主張の拠り所となってる条文でもあります。

日本はこの条文の存在によって対外戦争や交戦を回避してきました。

アメリカなどからの戦争参加圧力を回避し、自ら戦争を行うことを強く制限してきたのです。

しかしこの条文には「日本は自ら戦争を起こさないこと」などが定められているだけで、他国が日本を攻撃してきた場合のことには全く触れていません。

他国による攻撃への対処(極東地域の平和の維持)に関しては自衛隊と日米安全保障条約の役割となります。

自衛隊の存在

◎自衛隊法第三条条文

自衛隊の任務
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2、自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二、国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3、陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。


自衛隊は文民によって統制され、第三条にもある通り「日本の平和と独立を守り、国の安全を保つこと」が主たる目的であり、外国からの軍事的圧力に抵抗しています。

中国が急速に近代化し軍事力が高まってきたことにより、それまでは自分たちに任せておけというようなスタンスだったアメリカは相対的に弱くなり、日本は自衛隊を強化する必要に迫られ憲法と予算の範囲内で随時強化を行っています。

2021年4月に行われた日米首脳会談の共同声明で、極東地域における「日本の防衛力強化」を表明しています。

自衛隊の常備自衛官の人数は約14万8千人と周辺国と比較して少ないですが、練度が高く、最新兵器を配備しているため世界でも指折りの強度を誇ります。

特に海上自衛隊と航空自衛隊の評価が高いと言われています。

しかし日本の防衛方針は専守防衛であり、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使できるようになるため、「最弱の軍隊(自衛隊は軍隊ではありません)」と呼ばれることもあります。

そして、ほとんどの国の防衛の考え方として、侵攻してきた敵を自国領内で撃退すると国土が戦場となるため損害が大きく、可能な限り自国領外で撃退することが一般的ですが、日本の防衛方針は専守防衛であるため日本国内を戦場にしなければならず、もし侵攻を受けた場合、大きな被害を受けることが想定されます。

相手が強かった場合、ロシア・ウクライナ戦争を見れば分かりますが、多くの民間人が被害を受けるでしょう。

自衛隊にはこれらのような不利な点が多くありますが、周辺国は自衛隊の強さを計算に入れるため、一定の抑止力となっています。

日米安全保障条約及びアメリカの核の傘の存在

◎日米安全保障条約条文

日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望しまた、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的な安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的または集団的自衛の固有の権利を有しているを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって、次の通り協定する。


第一条(平和の維持のための努力)

1、締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武器の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。

2、締約国は、他の平和愛好国と共同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。

第二条(経済的協力の促進)

締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。

第三条(自衛力の維持発展)

締約国は、個別的に及び相互に協力して、持続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。

第四条(臨時協議)

締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。

第五条(共同防衛)

1、各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

2、前記の武力攻撃及びその結果として執った全ての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

第六条(基地の許与)

1、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持の寄与するため、アメリカ合州国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

2、前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合州国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合州国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。

第七条(国連憲章との関係)

この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響を及ぼすものではなく、また、及ぼすものとして解釈してはならない。

第八条(批准)

この条約は、日本国及びアメリカ合州国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。

第九条(旧条約の失効)

千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合州国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生のときに効力を失う。

第十条(条約の終了)

1、この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合州国政府が認めるときまで効力を有する。

2、もっとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意志を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する。


この日米安全保障条約の存在によって日本はアメリカ軍に守られ、アメリカは東アジア、東南アジア地域における影響力を行使しています。

世界最強と言われるアメリカ軍が日本に駐屯することで極東におけるパワーバランスが保たれて抑止力となり戦争を回避できているのです。

そして中国やロシア、北朝鮮の核の圧力に関してはアメリカの核の傘によって緩和されている状態となっています。

しかし、中国人民解放軍の急速な近代化によりアメリカの力は相対的に弱まり、パワーバランスを保つために日本の防衛力の強化が課題となっています。

日本はアメリカ以外の国と強固な同盟関係を構築することができない

現在の日本は第二次世界大戦終結以降、平和な状態です。

ですが人類の歴史上、恒久的な平和は一度も実現できていません。

現実的に考えれば、日本もいつか戦争に巻き込まれることになるでしょう。

平和な期間は長ければ長い方が良く、平和を継続するためにはしっかりとした外交を行わなければなりません。

ですが日本はアメリカ以外と直接の抑止力となるような条約を結ぶことは恐らくできませんし、それ以外の軍事上の義務を伴った条約は範囲が限られています。

なぜなら憲法第九条があるため、相手国が攻撃を受けたとしても参戦できないからです。

条約とは双方にとって対等な条件で行うものであり、日本は軍事上対等な条件を満たせない場合が多いため、他国と強固な同盟関係を結ぶことが非常に難しく、それに伴って独自に多くの仲間を作って抑止力とすることもまた難しいのです。

例えば、北大西洋条約機構(NATO)のような相互防衛機構に参加することもできません。

アメリカは日本の同盟国と呼ばれていますが、実質的に対等な同盟というよりも庇護的な関係にあります。

日本がアメリカの緩衝地帯となりアメリカが東アジアや東南アジア周辺地域における影響力を行使できるようにする代わりに守ってあげるよというイメージです。

そのため日本は軍事上において独自の外交を行うことができず、アメリカに従属するものとなります。

現在のところアメリカ軍の力と影響力は未だ強くそれで問題ありませんが、アメリカの力が相対的にさらに弱まり、日本が軍事上も独立しなければならないけどできない状況となった時、日本の平和は脅かされるでしょう。

日本の締結できる条約協定の範囲

日本が締結できる軍事上の義務を伴った条約や協定は、「サイバー攻撃への対応」、「国境の安全や国境を越える犯罪との戦い」、「テロ対策」、「情報交換及び情報共有」、「有事における武器以外の物品の融通」、「防衛のための装備品の共同研究や技術移転」など、国との戦いとは直接関係のないものに限られます。

しかし、以前に「戦闘地域外における兵站警備」、「戦場から遠く離れた地域の治安維持」を行ったことがあるため、基準や範囲をどのように定めるのかは難しいですが、議論を深めていけばこれらもできるのではないかと考えられます。

そしてこれらの条約や協定はアメリカと戦う可能性が低い国のみと締結することができます。

その理由は、アメリカと条約締結国が戦った場合、日本はアメリカを優先させなければならないからです。

日本がとある国と条約を結び、そのとある国がアメリカと戦争にまで発展しそうな関係になった場合、日本はとある国との条約を終了することになるでしょう。

2022年10月時点で日本と軍事上の義務を伴った条約や協定を締結している国は、フランス、イギリス、オーストラリア、カナダ、インド、ニュージーランドです。

特にオーストラリアとインドとは関係を深めており、「安全保障協力に関する日豪共同宣言」、「安全保障協力に関する日印共同宣言」などを行って安全保障協力をより強く推し進めています。

今後、インドネシアや北欧諸国などとも協力関係を深めていく方針ではないかと考えられます。

なぜ沖縄と北海道に米軍基地が多いのか

日本の米軍基地はその多くが沖縄と北海道にあります。

その理由は日本を占領できる力を有している近隣の国は中国とロシアだからです。

北朝鮮はミサイルは脅威ですが、現在のところ陸軍、海軍、空軍のすべてにおいて日本を占領できる水準にありません。

以前は北海道にも多くの米軍基地がありましたが、現在は沖縄により多くの米軍基地がある状況となっています。

それはロシアの脅威度が薄れ、中国の脅威度が濃くなったからです。

本当に米軍基地縮小を望むなら

米軍基地は沖縄及び北海道の人達にとって負担となるかもしれませんが、日本は専守防衛を基本方針としているため受け身な立場であり、もし侵攻された場合、沖縄と北海道は最前線となると想定されるため日本の国防上必要なことなのです。

ですが日本の国防を考えた上で沖縄や北海道の米軍基地を少なくする可能性のある方法は存在します。

中国やロシアが東アジアや東南アジアでの覇権を諦め、核ミサイルを放棄し、軍事力を大きく縮小すればいいのです。

そうすればアメリカ軍も規模を縮小し、基地は減少していくでしょう。

中国やロシアは能動的な立場にあり、日本の平和はこれらの国々の動向にかかっています。

そのため、本当に基地を縮小することを望んでいるなら在日米軍や日本政府に抗議するのではなく、中国やロシアに強く抗議する必要があるでしょう。

日本の未来の平和

中国は台湾併合の意思を強くしており、過去にも中国軍の脅威にさらされアメリカ軍が台湾に向かう事態にまで発展したことがあります。

第三次台湾海峡危機でアメリカは「ニミッツ」と「インデペンデンス」の2個空母戦闘群を台湾近くの国際海域に展開したことにより収束しました。

第三次台湾海峡危機は1996年の出来事であり、中国海軍は空母を持っておらず、アメリカの空母に対して何の対応もできず威嚇するのみでした。

しかし26年後の2022年現在は2隻の空母を就航させています。

そのためアメリカ海軍も第一列島線内への侵入はもちろん中国海軍との戦いとなった場合、大きな危険が伴うと見られています。

もし台湾が中国に併合されてしまった場合、台湾は中国の太平洋進出拠点となり、第一列島線は突破され、沖縄や九州周辺への中国軍の圧力はさらに増すでしょうし、第二列島線の内側も中国軍の圧力にさらされることになるでしょう。

そして台湾の人達は徴集されアメリカや日本などと戦わなければならない状況となるでしょう。

もし沖縄も中国に不法占拠されてしまった場合、勢力争いは完全に第二列島線に移り、沖縄には多くの中国軍基地が作られ、台湾と同じく中国の太平洋進出拠点となり、中国軍の圧力は四国や近畿、関東南部にも及ぶでしょう。

そして沖縄の人達も徴集されアメリカや日本などと戦わなければならない状況となるでしょう。

そのため受動的立場である日本の未来の平和は東アジアと東南アジア、インド洋のパワーバランスをいかにして保つかにかかっています。


昔、ナポレオン戦争時代のプロイセンの軍隊は国民に嫌われていました。

兵士は国民から疎外され、国民を守るという意識が低くなり、それに伴って士気も低くなりました。

プロイセンがナポレオンに敗北した要因の1つと言われています。

過度に仲良くする必要はありませんが、在日米軍に対しても自衛隊に対しても疎外感を与えることなく接した上で、何か不祥事が起きたときは節度を持って適切にかつ徹底的に抗議しましょう。

本当に米軍基地の縮小を望んでいるなら、中国やロシアに強く抗議しましょう。

真に反戦や環境保全を望んでいる人達も同様です。

本当に抗議しなければならない場所を間違えてはいけません。